【最果タヒ展】南果歩が朗読&トークイベントに登場!「言葉の風がパルコの館内に吹いている」[渋谷PARCO]

注目の現代詩人・最果タヒの“詩の展示”『最果タヒ展』

「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」が、渋谷 PARCO 4階のパルコミュージアムトーキョーで開幕した。
それを記念して、初日の 12 月4日、かねてから最果のファンである俳優・南果歩による朗読と、 LINE で参加した最果も交えてのトークイベントが開催された。

20代で現代詩手帖賞、中原中也賞、現代詩花椿賞を受賞し、売れないことが常識だった詩集を次々とヒットさせている最果は、優れた詩人というだけでは語れない。詩を大胆に本から解放し、言葉の居場所を次々と開拓するエポックメーカーと認識しなければ、熱狂的な支持が広がる異例の人気は理解できないだろう。
本展は、昨年の横浜美術館での個展の流れを汲みつつ、そんな彼女の最新形がぎっしりと詰まっている。

イベントが行われたのは、会場の一番奥にある「詩になる直前の、渋谷パルコは。」と名付けられたスペース。
ここは、詩の断片が裏表に書かれた無数のモノクロの紙片が、モビール状になって天井から吊るされており、空調のかすかな風や、人のわずかな動きで紙片が回転、見る角度や瞬間によってまったく異なる詩が生まれるという独創的な展示がなされている。従来の詩は、書かれた通りに暗誦したり、一字一句から書き手の思いを類推するものだったが、フレーズの順番も組み合わせも指定しない展示は、詩は書き手のものでなく、受け取った人の中で成立するもの、詩は時とともに移ろう不安定で自由なものだという最果の考え方が、直感的に感じられる。

登場した南の服装は、展示作品の色に合わせたのか、黒い繊細なレースのセットアップ。
前日の内覧会に参加したという南は、展示中の詩から自分で選んだ数編を続けて朗読した。手元のファイルから、何を読むかはその場のインスピレーションに任せており、選んだのはどれも主語が「ぼく」のものだった。

朗読後は、最果がLINEで参加してのトークで、南は「毎晩、寝る前にタヒさんの詩を自分のために音読している」と告白。
好きな作品が多くある中で最新の詩を選んだ理由を「まさに2020年12月にふさわしい言葉たち。言葉の風がパルコの館内に吹いていると感じた」と説明し、最果作品の魅力を「心のディスタンスがある。明るく励ましてはくれないけれど、心の奥にあるダークサイドにそっと寄り添って、どこかで私を見ていてくれる気がします」「お芝居の脚本は、演じる役にはすでにキャラクターがあるが、詩はもう少し遊べる。

タヒさんの詩の“ぼく”は、性別不詳で抽象的で素敵。私はふだん女性として暮らしているけれど、表に出さない部分も曖昧な部分もあり、それが自由に出せるんです」と話した。会場に設置されたモニター上のLINEの画面で登場した最果は、南が指摘した「心のディスタンス」に対して最初は「笑」という文字で反応しながらも「それは確かに私の軸にあると思います。人見知りなだけなんですが」 と応じ、「南さんの朗読は、言葉が内側に積もっていく感じがする。素敵です」 とメッセージを送り、一方は肉体と声、一方はオンラインと文字という対談は、温かな充実感を得て終了した。

展示は他にも、複雑な立体オブジェや、360度の輪の内側に詩が書かれていて、どこから読んでも何回ループしても良いものや、透明なアクリルの文字が照明で壁に映し出されて詩になるなど、これまでにない言葉との出合いや詩の生成が体験できるものばかり。南は「タヒさんの詩と佐々木(俊)さんのデザインの組み合わせが素晴らしい。この展示自体がアート」と結んだ。渋谷PARCOでの開催は、12月20日まで。

最果タヒ展

われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6 等星なのです。

【会場・会期】

≪東京≫
渋谷 PARCO 4階 パルコミュージアムトーキョー
2020年12月4日(金)〜 12月20日(日) 11:00〜21:00 ※会期中休館日なし

≪名古屋≫
名古屋 PARCO 西館6階 パルコギャラリー
2021年2月13日(土) 〜 2月28日(日) ※2月17日(水) 休館日

≪大阪≫
心斎橋 PARCO 14階 パルコイベントホール
2021年3月5日(金) 〜 3月21日(日) ※会期中休館日なし

【入場料】 一般 800 円、ミニ本付チケット 1,800 円
【主催】 キョードー大阪/パルコ
【企画・製作】 キョードー大阪
【協力】 sou nice publishing

最果タヒ展
最果タヒ展|われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。
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